全盲4人で福岡に行ってきた

※これは全盲のみで旅行することを推奨するものではありません。ただ、旅行、そうまでいかなくても多少の遠出はどちらかというとインドア系な視覚障害者にとって良い気分転換になると思います。ある程度準備をすれば旅行もできるのか、世の中にはこんな旅行をしている人たちもいるのかということがなんとなく伝わると良いかなと思い、記事を書いています。
全盲だけで旅行する場合、安全対策はしっかり行いましょう。焼肉と比べミスをした時のリスクは圧倒的に大きいです。
先日、全盲の友人たちと福岡へ2泊三日の旅行へ行ってきました。今回の旅行の具体的な計画の立て方や持ち物などについては、一緒に行った友人が詳しくまとめているので、ここでは旅行の準備、当日に訪れた場所などを時系列にまとめようと思います。

事の始まり

以前全盲焼肉チャレンジや飲み会を行って以降、全盲の同期の結束は4年目にして唐突に高まり始め、12月(?)ごろ、卒業旅行としてどこかへ行きたいという話になりました。具体的な候補としては、

  1. 北海道で北の大地に試されながらおいしいものを食べる
  2. 東北でおいしいものを食べる
  3. 大阪でテーマパークに行ったりおいしいものを食べる
  4. 福岡でおいしいものを食べる
  5. 沖縄でステーキを食べる
などなどいろいろ挙げられました。初めての全盲での旅行で北の大地に試されに行くのは積雪があった場合割と危険なのではないか(当初旅行の時期も決めていなかった)、某テーマパークを移動するのはけっこうしんどいのではないかなど、いろいろと考えた結果、人も多くそれなりに安全に動けそうで、おいしいものを食べられそうな福岡・博多へ行くことにしました。

具体的な計画を立てる

旅行の行き先を決めていこう、卒研を進めたりしているうちに、気づいたら1月末になっていました。この時点で航空機のチケットは抑えられていたのですが、宿泊場所や具体的に訪れる場所は何一つ決まっていませんでした。ここには載せませんが、当時の全盲グループのやり取りを振り返ると、2月上旬以降一気に慌て始めているのがわかります。
私はホテルの予約を行ったのですが、部屋への誘導などをお願いしたところ、快く引き受けていただくことができました。本当に良かったです。福岡で行きたい場所については、ひたすら行きたい場所について書かれたリンクをLINEに貼りまくって、おおよその地理的な情報などと「もつ鍋とラーメンと明太子と屋台に行きたい」というメンバー全体の意見を踏まえ検討しました。

当日

1日目

羽田空港へ向かいます。飛行機に乗るのが2度目で、精神年齢が幼稚園児並みな私は、初めてJALを利用できる(1度目はANA)ことや、機材が新しいA350であることもあり、空港に向かう時点ですでにテンションが上がっていました。正直飛行機に乗るのは2度目で、座席の位置も違うので何とも言えないですが、一度目に乗ったB737-800と比べ、離着陸時の音は静かだったように思います。2時間近くのフライトはあっという間でした。そして、空港や機内でのJALの係員やCAの方々の対応は本当に丁寧でした。
機窓から撮影した写真
ここまで順調だったのですが、伊丹から来る友人が、JALのシステムトラブルに巻き込まれてしまうトラブルがあり、うまく合流できるのか若干不安でしたが、問題なく宿泊先のホテルで合流することができました。

無事に合流することができたので夜ご飯です。もつ鍋を食べようということで、博多駅前のやまやへ行くことに。住所からおそらく博多駅の中にあることがわかり、駅までタクシーで向かい、駅ビルらしきところを探したのですが、それっぽい雰囲気はありません。店に問い合わせようとしていたところ、地元の方に声をかけていただき、店まで案内いただくことができました。結局店は、駅ビルを抜けた先にある高架下にありました。これはおそらく人に聞かなければわからなかったと思います。もつ鍋はもちろんですが、最初に食べた明太子が、大葉が添えられておりおいしかったです。そしてなんとお土産に明太子をいただきました。びっくりですね。やまやは都内にもあるので、都内の店舗にもそのうち行ってみたいです。

正直これまでマスクをつけていることによって嗅覚が鈍っていたり、タクシーでの移動が多かったため、あまり福岡っぽさを感じられていなかったのですが、駅前を歩いたりもつ鍋を食べているうちにようやく福岡に来たことを実感できました。

2日目

二日目です。二日目は、天神周辺で明太子化ラーメンを食べて、地下街を散策して、また何か食べたりしつつ夜には屋台に行こうというとてもざっくりとした予定を立てていました。屋台以外は候補の店をある程度決めていましたが。
昼には元祖博多めんたい重へ行くことに。天神駅から比較的簡単に向かえると思っていたのですが、駅の方に話を聞いたところ、公園を突っ切らなければいけないとのこと。1日目に続き、また難易度の高い移動になりそうでしたが、今回も地元の方に声をかけていただき、10分近くの道のりを案内していただきました。その後も、地元の方には何度も声をかけていただき、経路を教えていただいたり案内いただくことが多くありました。申し訳なくもありありがたくもありました。
博多めんたい重は30分待ちでした。QRコードを読み込むことで、待ち時間などを確認できるようになっていたのですが、確認すると、待ち時間のわりに人の数は多く、ものすごく回転の速い店なのではないかという不安が出てきました。「明太子のファーストフード店みたいな感じか。あまりゆっくりはできないかも」というような話をしていました。ただ、実際に店に入ると、個室になっており、とてもゆったり過ごすことができました。
めんたい重。ご飯の上にのりや明太子が乗っている
その後は、ドトールで休憩し、福太郎天神テルラ店へ。めんべいを買ったり明太子お替り自由ということで再び明太子とご飯を食べることに。屋台へ向かう30分近く前まで明太子を食べていました。この店の方にも丁寧にめんべいの種類や内容量などを教えていただけました。
最後は屋台です。今回の旅行で最も難易度が高いことが予想されていました。事前にGoogleマップでよさげな屋台を調べ、屋台おかもとへ行くことに。この時にもGoogleマップで店までの距離や経路などを確認しながら歩いたのですが、途中地元の人しか通らなさそうな路地を歩いたのが福岡を感じられて面白かったですね。通りから一本入ったようなところにもおいしそうな飲食店や居酒屋らしき建物がたくさんありました。最終的には再び人の力を借り、無事にたどり着くことができました。お酒を飲みつつラーメンとあぶり焼き明太子と牛サガリを食べましたがどれも本当においしかったです。屋台の方がメンバーの集合写真を撮ってくださったのですが、その写真をSeeing AIに投げたところ、自分は「幸せそうに見える茶色の髪を持つ20歳の男性」として認識されました。実年齢よりも若く見えるみたいですね。あと茶髪ではありません。
夜はホテルで、1日目にやまやでもらった明太子とめんべいを食べつつちまちま飲んでいました。お土産としてもらった明太子の箱があまりにもおしゃれで、実はチョコレートなのではないかなどと話していましたが、中身は明太子でした。終始明太子を食べ続けた1日でした。

三日目

最終日です。三日目はあまり動き回らず、空港でご飯を食べたりお土産を買ったりしていました。空港内では、JALの係員の方に、飲食店までの移動やお土産の購入を手伝ってもらうことができました。本当にまったく困りませんでした。追加で料金を払うべきじゃないかと思えるような本当に丁寧な対応でした。そして羽田へ。福岡旅行は無事に終わりました。

余談:福岡っぽさの話

上にも書きましたが、1日目に福岡についてから、もつ鍋を食べるために駅周辺を歩き始めるまで、私たちはあまり「福岡っぽさ」を感じられないでいました。福岡についてからの大まかな行動を挙げると、空港到着→チェーン店のカフェ(タリーズ?)でチェックインまでの時間をつぶす→タクシーでホテルへ移動といった感じ。現在地を確認すれば福岡市にいることはわかりますがそういうことではありません。マスクを基本的にしているので福岡っぽいにおいはあまりわかりません。カフェもチェーン店ですし、店内では空港の放送はほとんど聞こえません。ホテルの部屋は一般的なビジネスホテルといった感じ。視覚と嗅覚を使わずに福岡っぽさを感じる方法はあるでしょうか。
ということで私たちは、ホテルのテレビをつけ、ローカル番組を見て福岡を感じることにしました。しかし、テレビをつけたところよくあるホテル特有のチャンネルを選択する画面が表示され、格闘しましたが結局地上波のローカル番組を見ることはできませんでした。

まとめ

程よく計画を立てる

今回の旅行は、本当に恐ろしいくらいに順調に進みました。様々な人に声をかけていただいたというのがかなり大きかったとは思いますが、やはり事前にある程度計画を立てていたためにうまく進んだ部分も大きかったのではないかと思います。特に大まかにでも地理感覚を把握しておくことは重要だと思います。

過信しすぎず安全第一な行動をとる

これも重要だと思います。このグループは、割とそういった考えで全員が動いているので平和に旅行を進めることができました。ある程度チャレンジするのは楽しいですが、安全が一番重要です。
本当に濃厚な三日間を過ごすことができました。今後も、周囲に極力迷惑をかけず、安全にいろいろ挑戦していこうと思います。